オープンリールデッキの誕生90周年を祝う
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オープンリールデッキ
今年はオープンリールユーザーにとって、ちょっとした記念の年であることをご存知でしょうか?
90年前の1935年8月、ベルリンで開催された『第12回ドイツ放送博覧会(zur 12. Großen Deutschen Rundfunkausstellung Berlin 1935, 16. bis 25. August.)』で世界初のテープレコーダーが発表されたのです。つまり開催初日の8月16日がオープンリールデッキの誕生日と言えるでしょう。
フリッツ・フロイメル博士の発明に基づいた、先進的なリール式テープレコーダーであるオープンリールデッキは、今年で記念すべき90周年を迎えたのです。
写真は以前EMTEC社が公開していた1935年のMagnetophon。(ただしこの写真は翌年の年次報告書に掲載されたK2の写真ではないかとも言われています)
ドイツ放送博覧会は、現在のIFAで、世界最大かつ最も重要な家電見本市です。1935年はナチス政権下でしたので、後援には時の宣伝大臣ゲッペルスの名前も。
ドイツのライプツィヒでは16、17日に記念イベントも行われたみたいですね
世界初のオープンリールデッキを製造したのはドイツの大手電気メーかーAGE。記念すべき最初のモデルは『マグネトフォンK1(Magnetophon K1)』というモデルでした。そしてテープは、BASFが開発した磁気録音テープです。オープンリールテープの初期は紙ベースと思っている方も多いかもしれませんが(SONYの初期モデルや、3Mの試作モデルか確かに紙ベース)、BASFは最初の量産モデルからプラスチックベースを採用していました。
時のドイツはヒトラー率いるナチス政権下で、すぐに戦乱となりドイツ以外ではその存在をほとんど知られることなく、戦争に突入します。戦時下ではオーケストラの録音や、国策としてヒトラーの演説が録音されドイツ国内のラジオで繰り返し放送されました。その高音質な放送を傍聴していた連合軍は、ヒトラーが一日中生放送で演説していると思い込んでいたほどでした。
当時録音装置としてはほかに、レコード盤に直接録音する「レコーディングディスク」や、針金のようなものにテープと同じ原理で録音する「ワイヤーレコーダー」がありましたが、磁気テープによる録音はそれらの録音装置と比べてはるかに高性能かつ高機能なマシンでした
ちなみに、レコーディングディスクのわかりやすい音声としては1936年に開催されたベルリンオリンピックの女子平泳金メダリスト前畑さんの「前畑がんばれ!」。あの音声は、会場に設置されたテレフンケンの2台のディスクレコーダーで録音されたものですので、思い浮かべてみていただくとわかりやすいかも。さらに言うと、前畑がんばれの実況中継録音は2種類あって、会場で録音されたバージョンと、短波放送でNHKの山口受信センターで録音された2種類があることはご存知の方も多いと思います。音が若干悪い方が山口録音盤です
テープスピードを可変できることは暗号通信の場で絶大な威力を発揮しています。たとえば76cm/sで録音されたテープは、さらに数倍のスピードで早送りして、軍事用の通信に使われ、これを潜水艦内で録音してもとのスピード、この場合は数倍のスロー再生して通常音声に戻して内容を確認していたとのこと。連合軍はたとえ傍受できてもこの機能がないため通信内容がわからないという、超兵器としての一面もありました
当初の状況下ではこうした軍事用途でその威力を発揮したオープンリールデッキでしたが、オープンリールデッキが本当に人類の幸せに貢献する機械となったのは、戦後アメリカでの発展であることは間違いありません
戦後、米軍調査団のジャック・マーリンによって、ルクセンブルクのラジオ局で発見されたマグネトフォンは、アメリカに渡り、AMPEXがレコーダーを、スコッチがテープを製造する基礎となりました。アメリカのテープレコーディングの発展はナチスの戦利品によってもたらされたという一面があるのです
その後アメリカで開発が進んだオープンリールデッキは、レス・ポールの天才的なアイデアをもとに、AMPEXがマルチトラックレコーダーを開発したことで、音楽録音技術に革命的発展をもたらし、その後の50から70年代に渡って、ポピュラーミュージックの発展に世界的に寄与したことは本当に素晴らしいことだっただと思います。
今現在はデジタルレコーディング時代となって久しく、アナログテープでの録音のことなど忘れさられたような状態ですが、現在のように我々が素晴らしい音楽を聴くことができるのも、この時のオープンリールデッキの発展によるものなのは間違い無いでしょう
オープンリールデッキの製造は90年代にREVOXが終了して以降、しばらく空白の時代が続きましたが、21世紀に入って、いくつかの小規模なプロジェクトによって新品で入手することは可能です。(かなりお高いですが!!)。そしてオープンリールテープは、開発メーカーBASFの直系であるRTMが現在も製造を続けています。アメリカではATRがテープ製造を継続しています。
これからも末長くアナログ・テープ・レコーダーの時代が続きますように、次回は誕生100周年をぜひお祝いしたいと、心より願っています
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