オープンリールテープの保管法
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オープンリールテープ, 情報
オープンリールデッキユーザーの悩みの種の一つがテープの保管ではないでしょうか? 大切なテープを、少しでも長く良いコンディションのまま持ちつづけたい、当店も商品のテープは防湿庫に保管し、可能な限り湿度と温度、埃対策を行っていますが、RECORDING THE MASTERS ではHPに長期保存を目的としたテープ保管の指針を記載していましたので、あらためて確認しました。(テープカタログの2ページ目、右下)
以下、稚拙な翻訳で恐縮ですが、全文の日本語訳を掲載します
RECORDING THE MASTERS のテープカタログより
<オープンリールテープの長期保存方>
磁気テープは、50年以上にわたる長期間の保存が可能な記録メディアであることが証明されています。それにもかかわらず、きちんと再生できなくなっているものがあります。多くの場合その原因は、適切な保存方法と取り扱いを行っていなかったためです。磁気テープは正しく取り扱うことによって、確実に長期保存が可能となる記録材料なのです。
取り扱うスタジオと保管庫における温度/湿度の上限と下限
温度 | 相対湿度 | |
スタジオ内 | 15℃~26℃ | 45~70% |
保管庫内 | 15℃~22℃ | 40~60% |
テープを長期保存するには空調設備が備えられた保管庫で、庫内の温度/湿度を正しく管理して下さい。庫内の清掃には、酸性成分を空気中に放出しない洗浄剤を使用して下さい。工業地帯の周辺などで大気汚染の影響が強い場所では、換気口に適切なエアフィルターを設置して下さい。保管にはスチールラックの方が木製の棚より好ましいでしょう。木製の棚は湿気を帯びやすく、万が一火災が起きた際には強い炎とともに有毒ガスを発生させます。
長期保存を目的としたテープは、平滑に巻き取られていなければなりません。再生と早送りを繰り返すなど、異なる動作モードにさらされたテープは圧力分布が均等では無い状態で巻かれており、乱巻や段巻きになっていることもあります。保管の前にはテープを均等に巻き取るため、ライブラリーモードなどでテープを巻き直す必要があります。
実際には、スタジオと保管庫のコンディションは同じではありませんので、長期保存をするテープを保管庫に収める際には、ポリエチレン製の袋に入れる前に保管庫内の環境に慣らすため、埃をかぶらないようにして保管庫内にで数日間おいてから収納して下さい。
磁気テープは原則として縦置きで保管して下さい。ハブ巻きのテープはハブを固定して下さい。
オーディオ用の磁気テープは曲の終わり側がリールの外周にくるように『tail out(テール・アウト)』で保管して下さい。再生する際に必ず巻き戻す必要が生じ、これによって転写が大幅に低減されます。
オリジナル以外のケースに保管する場合は、その材質が酸を含まないものである必要があります。酸はテープのバインダーを分解する触媒として作用するためです。
温度が変化することでテープが膨張・収縮し、これが繰り返されることでテープの圧力分布が不均等な状態になり、巻きムラや変形が生じてしまい、磁性層やベースフィルムに深刻な悪影響を及ぼすことになります。保管庫内の温度偏差は4℃以内に保ち、2~3年おきに定期的な巻き戻しを行って下さい。
以上がその内容です。最も驚いたのは保存時の湿度の上限が60%という点でした。よく言われているのは「防湿庫できっちり湿度管理」「湿気を吸ってしまいベトベトに・・・」と、とにかく湿度は低い方が良いような言われ方をしていた印象だったのですが、下限は40%。本当かなと思い、SONYのHPを確認すると「プロメディアのテープの保管」について解説したページでは次のような内容でした
SONYのプロメディアの保管に関する解説ページより一部引用
<保存環境>
磁気テープの寿命は、ベース、バインダー、バックコート、潤滑剤などに使用されているプラスティックやゴムといった有機高分子材料の劣化速度に依存しています。この速度はきわめてゆっくりしたものですが、熱と水分によって加速されるため、温度15 ℃ ~25 ℃ 、湿度40%~60%RH の条件下で保存してください。
と、ほぼ同じ内容。これまで35〜40%をめどに設定してきたので、60%は素直に納得できない数字ですが、今後は40%を切らない程度に設定し直そうと考えています。
そんな湿度に関しては、カメラ用の防湿庫などを利用して安定的に管理することは、一般家庭でもある程度は可能ですが、実は温度管理の方が遥かに難しいのではないでしょうか。いまどき7月、8月に部屋を22℃以下に保つことは専用の部屋でないと事実上不可能に近いです。また15℃以上を保つため冬場もエアコンはフル稼働になるでしょう。
そしてもう一つ繰り返し強調しているのが「酸」による悪影響、外箱や保管庫内に「acid-free」を要求しています。この酸がバインダーを分解する原因としているのは大きな意味があるのではと、なんとなく感じています。
実際にはここまで厳密な管理はできないにせよ、大切なテープは出来るだけ良い環境で保管すべく、工夫していきたいと思います。
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